磁気量子臨界点とフェルミ面の相転移
強磁性や反強磁性などの磁性体の中には元素置換や圧力の印加によって磁気秩序状態を抑制させることができるものがあります。
磁気秩序を起こす温度が絶対零度近傍まで低下すると、熱ゆらぎよりも量子的なゆらぎが支配的になり、新たな基底状態あるいは励起状態が実現する可能性があります。unconventional超伝導などがよく知られた基底状態の一つです。
我々はこのような絶対零度近傍における、磁性の秩序−無秩序の境界(量子相転移点あるいは量子臨界点と呼びます)における新たな物性の探索を行っています。
磁気的な量子臨界点を探索する上で必要なのは磁気相図を明らかにするということです。
強磁性の磁気相図は、教科書的には図1bのような磁場温度相図が知られていますが、これに圧力の軸を加えて3次元磁気相図を描くと図1cのようになります。
これまで我々はZrZn
2やUCoAlなどで図2のような磁気相図を明らかにしてきました。
図1.CeRhSi3の結晶構造と超伝導上部臨界磁場Hc2の温度依存性(超伝導相図)。
図2.遍歴電子強磁性体のZrZn2(左)とUCoAl(右)のH-T-P相図。
ZrZn
2は名古屋大学との共同研究によるものである。