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研究内容

希土類化合物における量子スピン系

 スピンの大きさが小さな低次元スピン系では、量子効果が顕著になります。例えば、一次元の S = 1/2 反強磁性スピン系は、量子効果のため古典的なネール状態(上向きと下向きのスピンが交互に配列した状態)とは異なる基底状態をとります。このような量子効果が顕著なスピン系(量子スピン系)は、 d 電子を持つ遷移金属化合物には多くの報告がありましたが、4 f 電子をもつ希土類化合物ではほとんどありません。その原因の一つは、希土類イオンの4 f 電子の状態が、スピン S と軌道角運動量 L を合成した大きな全軌道角運動量 J で指定されることにあります。しかしながら、希土類化合物でも S = 1/2 に似た状態を基底状態に持つことがあり、本ホームページでも紹介してる Yb4As3 はその例です。ここでは、電荷秩序で Yb3+ イオンが一次元配列したことに加え, S= 1/2 に似た二重項基底状態により一次元量子スピン系が形成されたと考えられます。
 これまでの希土類化合物における量子スピン系はこの Yb4As3 以外にはほとんど知られていませんでしたが、最近我々は YbAl3C3 が二次元量子スピン系とみなし得ることを見出しました。さらにその物性を Yb3+ イオンが結合したスピンダイマーによる非磁性基底状態により説明することに成功しました。希土類化合物の量子スピン系の研究はこれまでほとんど行われていなかったため、今後の研究により従来知られていない新しい知見が得られることが期待されます。

   
(左) YbAl3C3の結晶構造
Ybの層は、他の原子の層により互いに隔てられているため、2次元的になっています。
(右) YbAl3C3の帯磁率の温度変化
実線はダイマーモデルにより得られた計算値で、実験結果をよく再現しています。

極低温量子物理研究グループ

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東北大学 大学院 理学研究科
物理学専攻 電子物理学講座
極低温量子物理研究グループ