本文へスキップ

研究内容

軌道秩序と揺らぎによる新しい電子相

 電子には電荷とスピンの自由度のほかに、各原子でどのような軌道の形を取るかの自由度があります。前者の自由度は電気伝導や磁性などのなじみの深い物性に直結し、それらの自由度が示す秩序や揺らぎは磁気転移や金属絶縁体転移などの現象として観測されます。これに比べて電子軌道の自由度はこれらの陰に隠れているが、種々の物性に極めて重要で本質的な働きをしている事が最近の研究で強く認識されるようになりました。本研究室では、電子構造の面から軌道の秩序と物性に関する研究を行っています。特に興味を持って進めているのは、軌道(f電子を対象とする場合は電気四重極という言葉を使います)間の相互作用を媒介するメカニズムです。このため結晶の対称性を低下させ、軌道縮退を解き、四重極とカップルする一軸性圧力を印加しながら、物性と電子状態を調べています。また、軌道秩序を合金化や軸性圧力によって壊し、それらの揺らぎによる新しい電子状態の探索を行っています。

   

CexLa1-xB6のdHvA効果:強磁場ではすべての濃度でdHvA効果の観測が可能であり、電子状態を調べることができる。


     

(左)CeB6の軸性圧力下の磁気相図。静水圧の場合と変化の仕方が定性的に異なる。
(右)電子の有効質量の軸性圧力(上)および静水圧(下)依存性。両者で有効質量の変化の仕方が定性的に異なる。これらの解析から軌道秩序状態における異方的な電子状態を反映していることが推定される。

   
磁場−Ce濃度の関数として、反強四重極相、反強磁性相、八重極相などの多様な磁気相が現れる。また、低磁場、Ce低濃度領域では非フェルミ液体的な伝導挙動を示す。電子の有効質量はフェルミ液体領域から非フェルミ液体領域に向かって発散的に増大する。

極低温量子物理研究グループ

〒980-8578
仙台市青葉区荒巻字青葉6-3

東北大学 大学院 理学研究科
物理学専攻 電子物理学講座
極低温量子物理研究グループ