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実験装置

純良試料・単結晶育成技術

 しばしば哲学的問題として、人間の本質は善であるか悪であるかとの問いが発せられますが、我々の研究もまさにこの哲学問題と同様に物質の本質への問いから始まります。人間からすべての虚飾を取り去ればその資質が見えてくるのと同様に、物質を極低温まで冷却することによりその物質を被う熱的衣を取り去りその性格を露わにすることができます。
しかしながら、個々の人間が成長環境により大きくその性格を変えるように、物質も成長のさせ方により構造を歪ませたり、異物を含んだりしてその物性を大きく変化させてしまうことがあります。それ故、その物質が持って生まれた性質を明らかにするためには理想的環境の下で成長させなければいけません。物質によっては、3000℃近くにしないと溶けないものや、単純に溶かすと分解してしまうものなど様々ですが、我々グループでは、それぞれの物質にあった作成方法を考え、最適な作成装置を使用して、純度、品質とも世界最高レベルの試料の育成を行っています。

複合極現場における測定、複合極現場による物性制御

 極低温は温度による遥動は排除し、物質の基底状態を見るために必要不可欠です。また、磁場は電子のスピンや運動に作用するために、物性や電子構造の測定に重要なばかりでなく、しばしば相転移を生じ、量子ホール効果のような新しい電子状態を生みます。圧力は物質の構成原子を変化させる事なく、物質の状態を変化させる事ができます。これらを同時に実現する事はたいへん困難ですが、私たちの研究室はこれらを同時に実現した環境(複合極限環境)で各種の物性測定をするばかりでなく、量子振動現象を用いて電子構造を測定する事を特長としています。このような複合極限環境下で量子振動が測定できるように開発したのは私たちが最初で、いまだに同様な測定できるグループは世界でもほんのわずかです。