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研究内容

電荷秩序と揺らぎによる新しい磁性相、電子相

 物質中の希土類イオンの価数はほとんどの場合3価ですが、希に2価となる場合があります。異なる価数の同種イオン(例えばEu3+イオンとEu2+イオン)が混在し、その価数が熱励起により揺らいでいる物質を熱的価数揺動物質と呼びます。この物質を低温にすると、異なる価数のイオンが周期的に配列した電荷秩序状態に転移します。 ところで、希土類イオンの磁性は、そのイオンに属する電子の数によってほぼ決まります。 例えば、Eu2+イオンの磁性はその隣のGd3+イオンの磁性とほぼ同じであり、電荷秩序状態のEu化合物では、あたかもEuとGdの2種類の希土類元素からなる物質のような磁性を示します。 つまり、電荷秩序は新しい磁性相をもたらす可能性があります。その一例が我々により見出された Yb4As3です。 この物質では、Yb3+イオンとYb2+イオンが混在し、熱的価数揺動状態にありますが、約290Kでそれらが周期的に配列する電荷秩序状態に移行します。 このとき、Yb3+イオンは<111>方向に並び、磁性を持たないYb2+イオンはYb3+イオンの一次元の鎖を隔離するように取り巻くため、立方晶に近い結晶構造を持つにもかかわらず、一次元量子スピン鎖が形成されます。



Yb4As3の電荷秩序転移。ほとんど立方晶といえる結晶構造にもかかわらず1次元性が発現する。
 熱的価数揺動から電荷秩序への転移は、磁性に対応させると常磁性状態から磁気秩序状態への転移に対応します。電荷秩序転移温度をなんらかの手段により下げることができれば、磁気的量子臨界現象と同じように電気的量子臨界現象を発現させることができます。臨界点近傍では価数の量子揺らぎが支配的となり、今までにない新奇な電子相が出現する可能性があります。電気的量子臨界現象はどのようなものか、そしてそれは磁気的量子臨界現象とどのように異なっているのか等の研究を行なっています。

極低温量子物理研究グループ

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東北大学 大学院 理学研究科
物理学専攻 電子物理学講座
極低温量子物理研究グループ